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発話を組み込んだ作曲を行う松吉菜々子、サウンドデザインを手がける池田翔の2名による音楽/音響作品。長い歴史を持つ「仲町の家」ならではの音の気配を活かしつつ、宮沢賢治「雪わたり」の世界を描き出す。

 耳で聴く作品は鑑賞者の意思で音を遮断できないという特徴を持っているが、音響作品の多くは作品の外から聞こえる音を「ノイズ」として扱っている現状へのアンチテーゼとして作品を制作した。サウンドデザインによって生まれる音/実際に自然が鳴らす音、物語に関連する音/そうではない街の音、プライベートに閉じられた音/パブリックに開かれた音などで表現される空間を対比させることによって音響作品における「ノイズ」とは何かを問う作品。

 また音楽に関しては、歌ではない、話し声や朗読の発話を音楽に組み込む発話旋律を使用した音楽となっている。私たちが普段話している時の声にも、音程がありリズムがある。登場人物のセリフや擬音語、五七調が小気味よいリズムを生み出し、朗読の抑揚がメロディを大きく左右する音楽/非音楽の境界を揺るがすような音楽がつけられる。

 会場である「仲町の家」は東京 北千住にある戦前に建てられた日本家屋である。冬の仲町の家には、ある種のサイト・スペシフィックが存在するため、それを大きく改変することなく素直に使用した。題材に選んだ宮沢賢治の「雪渡り」は戦前の冬に書かれた作品であり、その時代の文学作品は朗読されることを前提に書かれているという背景がある。仲町の家の音と物語の音の両方に耳を傾けることで物語の情景を音によって表現する。

  • 2022
  • 音響/音楽作品、サウンドインスタレーション
Exhibits

Nakacho Art Series #5 池田翔 / 松吉菜々子《雪わたり》

-2022
-仲町の家(東京、北千住)

東京藝術大学 芸術情報センター オープンラボ 2022 「擬風景展」

-2022
-東京藝術大学 大学美術館 陳列館

Credits

音響:池田翔

作曲:松吉菜々子

企画:荒川千優/三枝響子

 

朗読:青田亜香里

Piano:島多璃音

Violin:小暮莉加/三好花奈

Viola:永田菫

Cello:永田歌歩

Flute:幸賀美奈

Marimba:柳沢勇太

[System]

Speaker Top 4ch:Onkyo ST-V15XM ×4

Bottom4ch:Pioneer S-A4SPT×4

Power Amp Yamaha IPA8200

Headphone AKG K701

 本作品は現実でなっている環境音とサウンドデザイン的に生成された環境音の境界線を曖昧にすることで、音響作品におけるノイズ/非ノイズを問う作品であるため、立体的な音場を生成する8chキューブを採用した。聴取者の周りを360度均等に表現するスピーカーレイアウトのうち最も少ないチャンネル数で構成される8chキューブは下層に4つ・上層に4つのスピーカーを配置する。仲町の家のサイト・スペシフィックな情報を作品の中に取り入れているため、スピーカーが目立たないようなインストールを心掛けた。ヘッドホンを使用することでパブリックな空間とプライベー トな空間を分ける役割も担っている。ヘッドフォンはとてもプライベートで閉鎖的・個人的な感覚に感じられ、反対にスピーカーは開かれた空間として存在する。

 ヘッドフォンからは朗読のみ、スピーカーからサウンドデザインされた音や音楽が再生されるが、開放型ヘッドフォンを使用することでヘッドフォンを装着した状態でも音楽や環境音が聞こえるような仕組みをとっている。鑑賞者はヘッドフォンの着脱を行いながら鑑賞することで朗読のリズムや音程を取り入れている音楽の仕組みに気づく。また、待機してる人の話し声や偶然的に発生する救急車の音などは物語には存在しない音であるため、その音を聞くことで作られた音/作られていない音の境界線に鑑賞者は耳を澄ます。

 作品の「ノイズ/非ノイズ」を問うことで鑑賞者の耳を開き、音に対する感度を上げることを目的とした。

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